- 高齢者住宅・障がい者住宅
- 2019.01.29
病院のベッドはもう増やせない?!高齢者住宅が必要な理由
日本の医療は国民全員が健康保険に加入するのが前提の制度となっており、海外と比較すると誰でも適切な医療を受けられる環境が整っていると言われています。世界で見ても、日本は高齢化が進んでいる先進国であり、手厚い医療と介護が国民から求められている状況にあります。
団塊世代が後期高齢者になる2025年に向け、高齢者がこれから増加していくことが予想される中、病院のベッドが増やせない状況であることをご存知でしょうか。
完全に病床を増やせない訳ではなく、正確に言えば、病院のベッドを増やせない地域が多くあるという状況です。
病院は都道府県の認可がなければ、ベッドを増やすことも新しく入院施設のある病院を作ることもできません。そして基準病床数は医療法によって地域毎に定められており、基準の数以上のベッドがある地域では、新たにベッドを作ることは都道府県が認可できません。基準病床数は計算式を用いて、人口や入院受療率などから算出するもので、その数値を下回るエリアでしか病院のベッドを増やすことができません。
例えば、東京都で言えば、千代田区、中央区、港区、文京区、台東区が1つのエリアとなっている区中央部エリアでは、基準病床数5,827床に対して既存の病床数が1万3,394床あり、7,000ベッド以上が過剰の地域となっています。
愛知県内は病院のベッドが増えることはない
愛知県内は11のエリアに分けて病院のベッドの数を決めています。県内の状況を見てみると、名古屋・尾張中部エリアは基準病床数17,911床に対して、既存病床数20,976床、尾張北部エリアは基準病床数4,725床に対して既存病床数5,148床、西三河南部西エリアは基準病床数4,263床に対して既存病床数4,688床、東三河南部エリアは基準病床数4,139床に対して既存病床数6,468床となっています。愛知県内11エリア全ての地域で既存のベッド数で既にいっぱいとなっています。
愛知県全体では、基準病床数47,778床に対して既存病床数56,536床と約1万ベッドも過剰な地域となっており、今後は病院のベッドが減ることはあっても増えることはない地域となります。
これから高齢化が進んだ時に頼りになるのは高齢者向けの住宅
病院のベッド設置が、法律で上限が決められている中、高齢者人口はこれからどんどん増えていきます。そうなった場合、単純に考えてこれ以上増やすことができない病院のベッドや特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)といった施設のベッドだけで足りるのでしょうか。
行き場のない高齢者が出てきてしまえば、国としても困ってしまいますので、政府も病院だけでは高齢者を受け入れきれないと判断し、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の促進を図っています。
病院のベッドを増やせない以上、高齢者向けの住宅の必要性は自然と高まってきます。自分で生活ができる程度の高齢者であっても、子どもたちが遠方で働いていて1年のうちのほとんどを高齢者だけで暮らしている世帯も多くいます。そうした家庭では、子どもたちも高齢になった親を心配になります。遠くで暮らす子どもにとってみれば、親が高齢者住宅で暮らしている方が安心できます。そうした介護が必ずしも必要ではない方々も、高齢者向けの住宅では入居者の対象となりますので、入居者の範囲は広いと言えるでしょう。
時々入院の地域包括ケアシステムは高齢者住宅の安定経営に
病院のベッドを増やすことができない法律が何故できているかというと、病院のベッドが上限なく作られてしまえば社会保障費がどんどん増えていってしまうから。そこでベッド数に上限を設けましたが、高齢化社会を乗り越える方法として政府は、保険制度を使わずにできる方法として高齢者住宅を整備する考えになりました。
社会保障費を増やさずに安心して過ごすことのできる場所を提供できる一石二鳥の考えとなります。
高齢者住宅で暮らす方が病気などで入院が必要になった時には入院をし、治療を行なったらまた高齢者住宅に戻ってくる地域包括ケアシステムを国も推奨しています。入院期間を短くすることで社会保険費用を圧縮する流れになりますが、高齢者住宅を運営する側からの視点からすると、入院してもすぐに帰ってきてくれると家賃収入が途切れず、安定した運営がしやすくなります。
これからの病院の入院については、必要に応じて時々入院するようなイメージを政府も持っていますので、全国の医療機関もその考えに応じた動きに転じてくる可能性があります。そうした政策もあることから、高齢者住宅の運営については追い風といえるでしょう。
また保険制度で利用者の金銭負担が圧倒的に抑えられる病院や特養、老健施設は強敵なライバルとなりがちですが、法律上でベッドを増やすことは、ほぼ望めない状況です。こうした環境が整っているのも、高齢者住宅の大きな魅力となります。