- 高齢者住宅・障がい者住宅
- 2020.07.10
障がい者就労事業所に50万円 コロナ禍で異例の工賃下支え
政府の2次補正予算案に盛り込まれた、障がい者就労継続支援事業A型、B型事業所への一時金が、1事業所当たり最大50万円になることが分かった。
新型コロナウイルスの影響で生産活動収入が相当程度減った事業所に限り、支出分を補てんする。それによって浮いたお金を、事業所が利用者の賃金・工賃に回すことを想定。間接的に利用者の収入減を回避する方策と言えるもので、日本知的障害者福祉協会など複数の関係団体が要望していた。
公費を利用者の賃金・工賃に直接充てることは従来、原則として認められていない。
今回、間接的であれ、賃金・工賃を下支えする見通しが立った点は異例。政府は17日を会期末とする今国会中の成立を急ぐ。
A型、B型事業所の一部に一時金を支給するのは、厚生労働省の「生産活動活性化支援事業(仮称)」で予算額は16億円。1事業所に最大で50万円を全額国費で支給する。
50万円だとすれば、単純計算で3200事業所が支給対象になる。
一時金の使い道は「生産活動の再起に要する費用」(厚労省障害福祉課)で、家賃などの固定費、設備のメンテナンス費用、生産活動に特化した職員の人件費などを想定している。
生産活動収入がどの程度減った事業所を支給対象とするかは現時点では未定。1カ月の売り上げが前年同月比で50%以上減った中小企業に最大200万円支給する「持続化給付金」(経済産業省所管)の要件を軸に今後検討される見通しだ。
A型事業所は現在約4000カ所あり、利用者と雇用契約を結ぶ。最低賃金を保障しなければならない。B型事業所は約1万3000カ所あり、利用者と雇用契約は結ばない。18年度の月額の平均工賃は1万6118円だった。
障がい福祉関係の2次補正予算案にはこのほか、障がい福祉サービス事業所で働く職員約180万人に支給する慰労金などに1508億円が計上された。
新型コロナの感染者や濃厚接触者が発生した施設の職員には1人20万円、発生していない施設の職員には1人5万円を支給する。利用者と接する職員であれば、正規・非正規や職種は問わない。
地域活動支援センターなど障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業に従事する職員は支給の対象外。
今年4月1日に、それまでの地域活動支援センターから、障がい福祉サービスであるB型事業所に移行した「ブレンド」(相模原市)は、職員が慰労金の支給対象となるのか、気をもんでいる。
介護現場に復帰で40万円。2年働けば免除の再就職貸付を全国展開へ
厚生労働省は全国の介護現場に復帰する経験者に対して、最大40万円を貸し付ける方針を固めた。
2年間介護の仕事を続ければ返済は免除する。新型コロナウイルスの影響で高齢者施設の業務が増大し、人手不足がさらに深刻化していることから、即戦力となる経験者を呼び戻す狙いがあるという。
厚労省は、これまで全国で行っていた介護福祉士修学資金等貸付制度の再就職準備金貸付事業を拡大して対応する。実施主体は都道府県などで、国は10分の9を負担するもので、第2次補正予算案に計上した。
対象は介護福祉士やホームヘルパー2級、初任者研修修了など介護系の資格を持ち、現場経験が1年以上ある人。社会福祉士などは対象外となる。各都道府県にある福祉人材センターに届け出て、計画書などを作成して申請する。
準備金の金額は自分で決める。その使い道は基本的に自由だが、仕事に使うかばんや自転車、バイクの購入費などを想定。転居を伴う場合は、敷金礼金などにも使えるという。
2年間、介護職員として働けば返済は免除される。
実施は補正予算成立日から。同事業拡大の狙いについて厚労省社会・援護局福祉基盤課は「離職にはさまざまな事情があるので、準備金が介護現場への復帰につながり、その後も定着していただければ」と話す。
同事業は2016年から開始された。これまでは介護分野の有効求人倍率が高い首都圏や東日本大震災の被災地など14都府県が上限40万円で、そのほかは上限20万円だったが、今回、全国一律で40万円に引き上げることを決めた。
18年度の貸付実績は596人だという。 同事業の拡大について、日本介護福祉士会の石本淳也会長は「介護現場へ復帰するきっかけの一つとして、効果的に活用されることを期待したい」と指摘。
同時に「準備金を知っている人はどれほどいるのか。厚労省には積極的な制度の広報もお願いしたい」と要望する。
※記事引用 ・厚生労働省 ・国土交通省・㈱官公通信社・高齢者住宅新聞社・福祉新聞・日本経済新聞 他