- 高齢者住宅・障がい者住宅
- 2022.04.20
老人ホーム看取り率の増加病院看取り率がついに70%割る/看取り特化の訪問看護普及に向けFC展開へ/医療モール併設型のサ高住介護サービスや介護施設には+αの付加価値が必要な時代に
老人ホーム看取り率の増加病院看取り率がついに70%割る
2020年の人口動態調査によると、病院と診療所を合わせた医療施設での死者比率は69.9%となり、遂に70%を割った。在宅医療が進む海外ではオランダが30%を割っており、欧州諸国は50%前後が多い。
一方、自宅死はこの20年ほど13%前後だったが、昨年は15.7%に伸びた。コロナ禍での面会制限のため入院の敬遠や早期退院で自宅死が高まったようだ。
そして老人ホームでの死亡はこの20年で大きく伸びた。00年の1.9%が20年には9.2%となった。介護保険制度の浸透で入居への抵抗感が薄れニーズが広がった。競争により有料老人ホームの入居費低廉化も進んだ。特養などと同様に「看取り加算」が報酬に加わり、事業者も前向きになった。
特養の個室化が進んで身の回り品を持ち込め、施設が「第二の自宅」になりつつある。老人ホーム死の増加が病院死の漸減をけん引した。「最期は自宅で」と、70%近い国民が各種のアンケート調査で答えている。老人ホームが「第二の自宅」であれば、自宅死と老人ホーム死を合わせて「在宅死」とみなしていいだろう。
看取り特化の訪問看護普及に向けFC展開へ
楓の風(横浜市)は2021年10月より、看取り特化型の訪問看護フランチャイズ事業を展開している。
東京、神奈川エリアで在宅療養支援診療所(訪問診療)5拠点、訪問看護ステーション17拠点、デイサービス14拠点を運営する同社が、在宅での看取り経験と訪問看護事業所経営のノウハウを活用し、地域に貢献する事業所の立ち上げをサポートしていく。
楓の風が自社で運営する17カ所の訪問看護事業では、年間300~400件、延べ3000件を超える在宅看取りの実績を有する。
同社の下手将裕取締役は、「在宅での看取りニーズは今後いっそう高まっていく。看取り難民を出さないために、普及を図るべくFC展開に着手した」とその経緯を語る。
看取り率のデータや看取り特化の訪問看護事業者の出現などを見るに、今後、看取りなどの在宅医療のサービスのニーズが高まっていくのは明らかである。老人ホーム+訪問看護のモデルという新たなモデルも全国の事業者で注目が集まっている。新たな老人ホームモデルについては弊社にご相談を。
医療モール併設型のサ高住介護サービスや介護施設には+αの付加価値が必要な時代に
介護事業者A社は入居者が活躍し、地域の拠点となる医療モール併設型のサービス付き高齢者向け住宅を拡大していく方針だ。
地域に開かれた拠点となるよう、1階には歯科・脳神経内科・泌尿器科の3クリニックのほか、薬局、イタリアンレストランが併設されている。また、敷地内には牧場もある。
かつての長屋に存在したコミュニティを目指している同施設では、入居者の個性や能力に合わせて、「仕事」を担ってもらうことで、役割や生きがいのある生活を提案している。
例えば、農家出身の男性入居者は、飼育担当として牧場で飼っているヤギの世話を担っている。餌やりや小屋の掃除が日々の日課で、通学路で牧場の前を通る子どもたちからは、「ボス」と呼ばれて慕われている。
入居者の2~3割程度が何らかの役割を担っているという。これらの仕事は、「業務委託」として入居者が行う。その対価として、現金または施設内通貨で「給与」が支払われる。
ヤギの飼育を担当している男性入居者の場合、毎月の収入は現金2万円・施設内通貨2万円の計4万円。門の開閉業務の場合では、週4回の担当で、5000円相当が施設内通過で支払われる。
同社は、今後もこのようなサ高住の出店を進める方針で、5年間で8棟の展開を目指している。
介護サービスや介護施設の供給が飽和してきている地域も増える中、事業者に求められるのは、「差別化」である。質の高いサービスを提供することはもちろんだが、それ以外にもコンセプトや入居者への独自のサービスを提供することで、他の事業者との差別化を図るのはいかがだろうか。