生活の安全性を考えた住宅づくり
住宅内の不慮の事故で亡くなってしまったり怪我をしたりする方は多く、住宅内の安全性を確保することは重要なポイントとなります。厚生労働省の人口動態調査によると、2019年に不慮の事故により亡くなった方は39,184人いました。そのうち、3分の1が住宅内で発生した不慮の事故によります。
不慮の事故と聞くと、交通事故を思う方も多いかもしれませんが、2019年に交通事故で亡くなったのは3,215人と、住宅内で亡くなる方の方が4〜5倍も多いのが現状です。自宅内で亡くなる方が、交通事故で亡くなる方よりも圧倒的に多いという事実に驚く方も多いでしょう。
住宅内では、浴槽内での溺死・溺水が5,673人、窒息が3,187人、転倒・転落・墜落が2,394人。窒息については、食事中の誤嚥等が原因になり、住宅とは関連性のないものになりますが、浴槽内の溺死や転倒転落については、住宅の安全性を確保することで予防することができるでしょう。
今回は、住宅内の不慮の事故を減らすべく住宅の安全性について確認していきましょう。
浴室の事故を防ぐ
浴室内の事故は、小さな子どもが誤って浴槽に落ちてしまったり、高齢者が温度差によるヒートショックで溺死してしまうケースが報告されています。小さな子どもがいる家庭では、子どもが一人で浴室に入らないように気をつけたり、浴槽内に水を貯めておかないのも事故防止になります。
ヒートショックは、温度差による血圧の変動が原因です。そのため、浴室内の温度差を小さくするのが予防につながります。住宅の断熱性を向上させることで浴室を暖かくすることができ、冷暖房の負荷も小さくなり結果的に省エネにもつながります。
また、浴槽に入る時や出る時の転倒防止には手すりの設置が効果的です。浴槽の深さや高さにも配慮して設計することで、浴室内の安全を高めることができるでしょう。
浴室の床は、使用中は常時濡れている状態です。滑りにくい素材のものを選びましょう。
浴室は1人でいることが多く、家族が異変に気が付きにくい場所でもありますので、安全性を高めるのは重要です。
転倒や転落の事故
転倒や転落の事故は、階段で多発しています。階段からの転落は、高さがあるので、とても危険です。
滑りにくい素材を使うのはもちろんですが、階段の設計によっても安全性が変わってきます。例えば、階段の形状として踊り場を設けた階段にするだけでも、転落した時に受けるダメージが異なります。踊り場がない階段であれば、落下した時に階段の上から下まで受け止める場所がありません。
しかし、階段の途中で踊り場があれば、転落した時に踊り場で受け止められますので衝撃緩和の効果が期待できます。万が一、階段で転んで落下してしまっても、踊り場で止まることができれば、被害は小さくすることができるでしょう。
また、階段をL字型に配置するのも効果的です。落下した時にL字型であれば壁にぶつかることができるので、階段の途中で止まることができます。踊り場と組み合わせてL字型の曲がり角を踊り場にすれば、さらに安全性が高まるでしょう。
急な階段は落下した時の危険性が高まりますので、緩やかな階段を設計するようにしましょう。
階段の緩やかさにも影響してきますが、踏み面と蹴上げの高さも重要です。踏み面は階段の上り下りに足を置くスペースとなりますので、少し広めの方が安定するでしょう。
蹴上は高すぎると小さな子供や高齢者が躓いてしまいます。しかし、蹴上げの高さが低すぎても、使い勝手の悪い階段になってしまいますので、バランスの良い階段を目指すと良いでしょう。
また、階段には手すりも忘れずに設置しましょう。最近の住宅では手すりを設置するのが標準的になっていますが、若い方の中には手すりが邪魔になるから設置をしたくないと考えている方もいます。
戸建て住宅の階段に手すりを設置しない選択肢もありますが、階段でバランスを崩した時などは、手すりがあることで落下を防ぐこともできるでしょう。安全性を重視するのであれば、手すりの設置は必ずした方が安心です。